為替

[2023年3月] カナダドル 円 為替 考察

CADJPY 4時間足 2〜3月

概況について

カナダ円 (CAD / JPY) 2023年3月の為替の動きについての考察です。3月は既に半分以上が過ぎていますが、2月28日に付けた今年最高値1カナダドル100.88円をピークに下落傾向にあります。

週足で大きな動きを確認すると、2020年3月に73.81円の大底を付けた後に上昇を続けて来ましたが、2022年9月に天井の110.53円を付けそこからは下落基調にあり、上記100.88円は戻り高値の位置にあるように見えます。

経済指標のレビュー

CPI 消費者物価指数 (インフレ率) は、昨年6月 (発表は7月) のピーク以降前年同月比で下落傾向です (以下チャートの矢印の通り)。この傾向が明確になったことにより、カナダ中央銀行は利上げを行っている主要先進国で一番最初に金利を据え置きました。

金利を据え置くということで今後利下げが起きる可能性が出て来るとの観測から、カナダドルは弱含むことが考えられます。今後もこの傾向が続くとカナダドルの売りに繋がります。

Canada Consumer Price Index (CPI) YoY
Canada Consumer Price Index (CPI) YoY

GDP は、直近の前月比でマイナス成長となりました (以下チャートの丸の通り)。これは2021年8月 (改定値) 以来のことで、夏以降維持してきた微増傾向から流れが変わった可能性があります。

しかし、20の産業分野のうち12分野ではプラス成長しており、石油・ガス採掘業1分野の想定外のマイナスが大きく影響したためで、まだ景気が失速したとは言えない状況かと思います。

Canada Gross Domestic Product (GDP) MoM

雇用統計 は、引き続き強い状態です。COVID-19前の上昇水準に戻りつつあります (以下チャートの矢印の通り)。失業率も過去最低レベルにまで下がり維持しています。雇用は遅効指標と言われており、景気失速時に真っ先に崩れるものではありませんが、雇用市場は極めて強い状態にあります。

Canada Employment

WTI原油価格は、2008年以来の高値を昨年3月に付けその後6月のダブルトップ以降長く下落基調にあります。カナダは世界第4位の産油国で、特に原油などの資源価格が下落する局面ではカナダドルは下降しやすくなります。必ずしも直結するわけではないにしても、現在は資源高を理由にして買われる状況ではありません。

WTI Crude Oil Price

政策金利の発表

さて、3月はカナダ中央銀行による政策金利の発表があり、結果上記の通り、利上げを行っている主要先進国で一番最初に金利を据え置きました。上記経済指標からそう判断されたと考えられますが、やはり一番影響力が強いのはCPI (インフレ率) の鈍化でしょうか。

カナダ経済が一番影響を受けるアメリカではインフレについては一喜一憂している状況で、未だインフレ懸念が根強く残っています。アメリカのCPI (インフレ率) や今後の利上げ幅次第では、カナダは再度利上げに引き込まれる可能性もあるでしょう。

次回カナダの金利発表日は4月12日になります。それまでに新たにCPI、GDP、雇用統計が発表されます。そして、アメリカは来週3月22日にFEDによる政策金利の発表があります。これらの結果がこれまでの路線通りなのか、変化が出るのかについて観察することが重要になります。

カナダドルの動向

上記政策金利の動向がそのままカナダドルの強弱に繋がります。現状では、CPI (インフレ率)、GDP、原油価格は弱く、雇用統計は強い状態です。次の政策金利発表の日までに、上記指標に大きな変化がなければ金利の据え置きも続き、カナダドルは売られる傾向が続くでしょう。

しかし、おそらく一番カナダの政策金利に影響力があるのは、アメリカの政策金利だと思います。金融危機の始まりが示唆される今、一旦利上げを停止するかどうかは全世界が見守る重要な局面ですので、もし据え置きとなると米ドルとともにカナダドルの動向に対しても強い影響が出るでしょう。

日本円の動向

日本円の動向については、3月13日以降断続的に大きな円買いが入って来ており、ボラティリティが高い状態が続いています。資源通貨と同時に買われるなど、これまでのリスクオン・オフ時とは違う動きをしており、日本の将来的な利上げに向けて投機筋の力が働いているようにも見えます。

次の日銀政策決定会合は4月の終わりに予定されています。植田新体制で何が変わり何が変わらないのか、「現状では金融緩和の継続が必要」とハト派のコメントしているため、もし変化があれば大きく円高に向かい、事前に円高傾向の状態で会合で変化が無ければ円安に戻す、といった感じでしょうか。

まとめ

現状、カナダドルは弱く、3月中旬以降強い円買いが来ては少し戻しまた円が買われるという状況です。直近では、今後さらに円買いが来て円高になるかどうかに注目したいと思います。

しかし、3月22日のアメリカの金利発表内容によっては、大きくどちらかに動く可能性が極めて高いです。もし金利据え置きになればカナダドルは大きく売られカナダ円は下落し、逆に50bpsの利上げとなれば上昇、25bpsの利上げであればパウエル議長の質疑応答次第となるでしょう。

三角保ち合いの行方

CADJPY 4時間足 3月

上チャートは3月直近のカナダドル円になります。紫の線で三角形を描いていますが、これは、値の上昇と下落の値幅が徐々に狭まっていきチャートの形が三角形のようになる状態を表しており、三角保ち合いと呼びます。

これは買いと売りの勢力が均衡して来ている有り様で、その先の頂点近くに行き着くとどちらかに大きく動くことがほぼ確実に起こります。問題はどちらに動くかは確実にはわからないということです。

ちょうどアメリカFEDによる政策金利発表の日がその頂点と重なります。このチャートを見るに、その日のために力を蓄えているように見えます。