経済指標,  雇用統計

カナダ 雇用統計 2023年1月

概況

カナダ 統計局 の発表によると、2023年1月の雇用者数は予想1万5,000人に対して15万人、失業率は予想5.1%に対して5.0%とどちらも予想よりも良い結果となりました。

主に25〜54歳の層で雇用者数10万人増加の前月比+0.8%と全体を牽引しました。このグループは女性と男性の両方ともに顕著に増加しています。

55歳以上の層は4万3,000人増加の前月比+1.0%で伸び率としては最大となり、15〜24歳の若年層ではほとんど変化はありませんでした。

予想の10倍の結果となった雇用者数ですが、前月分の下方修正 (10万4,000人から6万9,200人) もあり、統計の精度に疑問は残りますが、雇用者数はアップトレンドであり失業率も安定しており、雇用については引き続き良い状態を維持していると言えるでしょう。

Employment on Upward Trend
Canada Employment Change
Canada Unemployment Rate

非永住者の顕著な雇用の伸び

2022年第3四半期の人口統計によると、カナダの人口は過去50年間で最も速いペースで増加し、主に非永住者 (カナダ生まれではなく永住権を持ったことのない) の増加によって牽引されました。

前年同月比で、2023年1月の雇用者全体の伸び率が前月比+2.8% (+53万6,000人) であったのに対し、非永住者グループは+13.3% (+7万9,000人) と大きく伸びています。このグループが雇用者全体に占める割合は3.4%で、前年同月比で0.3ポイント上昇しています (3ヶ月移動平均、季節調整なし)。

非永住者は、科学・技術サービスで13.1%、卸売・小売業で12.3%、宿泊・飲食サービスで11.2%、医療・社会福祉で9.8%など幅広い業種に広がっています (3ヶ月移動平均、季節調整なし)。

コア年齢層が雇用の伸びを牽引

コア年齢層 (25〜54歳) の女性グループの雇用者数は、2023年1月に前月比+0.8%の5万1,000人増加しました。このグループの雇用率 (生産年齢人口に占める雇用者数の割合) は0.5ポイント上昇し82.2%と、1976年にデータが提供されて以来最も高い率となりました。前年同月比では、コア年齢女性の雇用率は2.1ポイント上昇しています。

末子が6歳未満のコア年齢層女性の雇用率は、過去12ヶ月間で72.9%から76.6%へと顕著に上昇しています。幼い子供を持つコア年齢層の女性は一般的に就業率が低いのですが、家計の必要性や育児へのアクセスの変化など、様々な要因を反映していると考えられます。

2023年1月までの12ヶ月間に、幼い子供を持つコア年齢層女性の雇用率は、マニトバ州とノバスコシア州で低下したもののほとんどの州で上昇しました (季節調整なし)。

コア年齢層の男性グループの雇用者数は、2023年1月に前月比+0.7%で5万人増加し、このグループの雇用率は0.5ポイント上昇し88.3%となりました。幼い子供を持つコア年齢層男性の雇用率は93.0%となり、前年同月の92.2%から上昇しました (季節調整値なし)。

前年同月比では、コア年齢層の女性は+4.1% (24万6,000人)、男性は+2.7% (+17万9,000人) でした。

55~64歳男性の雇用率が過去最高を更新

55歳以上の2023年1月の雇用者数は前月比+1.0%、4万3,000人の増加となりました。この伸びは55〜64歳の男性グループの+1.4%、2万4,000人の増加に牽引され、雇用率は1.0ポイント上昇し70.5%と、1981年以来の高水準に到達しています。

同様に、55〜64歳の女性グループの2023年1月の雇用率は59.6%で、こちらは1976年以来の高水準となりました。55〜64歳の雇用率は2022年夏以降、強い上昇傾向にあります。

前年同月比では、2023年1月の55歳以上の雇用者数は、科学・技術サービスで+17.3%の5万9,000人増、製造業で+6.8%の3万1,000人増、その他サービスで+18.0%の3万人増、医療・社会福祉で+6.0%の3万人増 (いずれも季節調整なし) となり多くの業種で増加となりました。

平均時給の前年同月比は2ヵ月連続で上昇が鈍化

2023年1月の平均時給は、前年同月比で4.5% (+1.42ドル、33.01ドル) 上昇し、前月12月の4.8% (+1.49ドル) から少し低下しました (季節調整なし)。前年比の賃金上昇率は2022年6月に5.0%に達し11月に5.8%でピークを迎えています (季節調整なし)。

2023年1月の前年同月比賃金の伸び率が鈍化しているのは、前年2022年1月の平均賃金が比較的高いことを反映しています。当時はパンデミック関連の公衆衛生上の制約があり、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス、情報・文化・娯楽など低賃金産業の雇用が減少し、一時的に平均賃金を押し上げる要因となっていたためです。

失業率は過去最低水準で推移、労働参加率は上昇

2023年1月の失業率は5.0%と安定し、2022年6月と7月に観測された過去最低の4.9%にわずかに及びませんが低水準を維持しました。完全失業者数 (生産年齢人口に占める無職で求職活動をしている数) は100万人となり、2022年夏以降に観測された水準とほぼ同じとなりました。

年齢層別に失業率を見ると、25〜54歳では前月比-0.1ポイントで4.1%と小幅に低下しましたが、55歳以上では+0.2ポイントの4.5%と上昇、15〜24歳のグループではほとんど変化はありませんでした。前年同月比では、すべての層で失業率が低下し、中でも若年層は-3.0ポイントの9.5%と最も大きく低下しました。

人種グループ別に見ると、前年同月比でコア年齢層の人種グループのほとんどで失業率は低下傾向にありますが、いくつかのグループでは依然として平均を上回っています。

2023年1月の失業率で、アラブ系8.1%と韓国系8.0%のカナダ人で引き続き最も高く、次いで黒人系7.2%、西アジア系5.8%のカナダ人の順となっています (3ヶ月移動平均、季節調整なし)。

1月の失業者の大半 (63.9%) は、1週間から13週間と比較的短期間の失業者でした。長期失業者 (27週間以上継続して失業している失業者) の割合は15.8%で、前年同月より19.9%減少しています。

労働力の規模は拡大し続けています。この1月にはさらに15万3000人 (0.7%増) が労働力として加わり、労働参加率は65.7% (0.3%増) に上昇しました。

卸売・小売業を筆頭に多くの業種で雇用者数が増加

2023年1月の雇用者数の増加は業種を問わず広範囲に及びました。卸売・小売業が前月比+2.0%の5万9,000増加と2022年2月以来の目立った伸びとなりました。これは昨年11月の小売業売上高が減少し経済活動が全般的に鈍化したことを受けたものであり、前年同月比では、雇用者数はほとんど変化していません。

卸売・小売業の雇用者数が増加した州を見ると、ブリティッシュコロンビア州が+1万8,000人の前月比+4.3%、オンタリオ州が+1万6,000人の+1.5%、ケベック州が+1万2,000人の+1.8%など5州に及んでいます。

医療・社会福祉は、前月12月の減少を補い4万人の雇用増で前月比+1.5%となりました。前年同月比では、4万9,000人の増加で+1.9%となり、この増加は、主にオンタリオ州の+2万2,000人とケベック州+1万1,000人に集中しています。

2022年11月の求人・賃金調査データによると、医療・社会福祉の求人数は数ヶ月間高止まりしていましたが、わずかに減少した模様です。

3ヵ月連続で変化のなかった教育サービスの雇用者数は、2023年1月に前月比+1.3%の1万8,000人増加し、12ヶ月前の水準と肩を並べました。この増加の多くはケベック州での+2.6%の+9,000人が占めています。

2023年1月の建設業の雇用者数は、2022年12月に記録した2万7,000人の増加に続き、1万6,000人増 (+1.0%) となりました。

前年同月比では+7.6%の11万4,000人の増加となり、宿泊・飲食サービスの+23.0%、情報・文化・娯楽の+12.6%、科学・技術サービスの+8.9%に次いで、建設業は過去12ヵ月間で最も成長した業種の一つとなっています。

介護や修理・メンテナンスなど様々なサービスを含む、その他サービスの雇用者数は2023年1月に前月比+2.2%の1万6,000人増とこの3ヶ月で2回目の増加となりました。

運輸倉庫業の雇用者数は前月比-1.7%の1万7,000人となり、2022年3月以来の目立った減少を記録しました。前年同月と比較すると、-3.6%で3万7,000人減少していることになります。

5つの州で雇用者数が顕著に増加

オンタリオ州、ケベック州、アルバータ州、ノバスコシア州、サスカチュワン州で雇用者数が増加し、ニューファンドランド・ラブラドール州で減少、その他の州ではほとんど変化がありませんでした。

オンタリオ州の2023年1月の雇用者数は前月比+0.8%の6万3,000人となり、最も雇用者数が増加した州となりました。同州の失業率は5.2%とほとんど変化はありませんでした。

ケベック州の1月の雇用者数は前月比+1.1%の4万7,000人の増加となり、こちらも9月以来3回目の大幅な雇用者増となりました。同州の失業率は3.9%と引き続き過去最低水準で推移し、全州のうち最も低い水準となっています。

アルバータ州での2023年1月の雇用者数は前月比+0.9%で2万1,000人の増加、ノバスコシア州は+1.9%の9,400人増、サスカチュワン州は+0.8%の4,500人増加となっています。

ニューファンドランド・ラブラドール州は、雇用者数が前月比-1.0%の2,300人減となり前月12月の増加分をほぼ相殺し、1月に雇用者数が減少した唯一の州となりました。

出典 :

The Daily — Labour Force Survey, January 2023 | Statistics Canada
Canada Employment Change | Investing.com
Canada Unemployment Rate | Investing.com