為替

カナダドル / 円 為替考察 [2024年] の見通し

連日111円前後の高値圏で推移しているカナダドル / 円 (CAD / JPY) ですが、2024年の為替動向についていくつかのシナリオを考えてみました。

3つの重要イベント

今年の大きなイベントとして、日本円については、日銀によるマイナス金利解除があり、そしてその後の金利動向にも注目が集まります。

カナダドルについては、カナダ中銀 (以下 BOC) の利下げ開始時期と回数、その判断材料となる経済・雇用・物価のデータ、そして何よりアメリカ中銀 (以下 FED) の利下げ開始時期と回数が大きな影響を与えることになります。

つまり端的にいうと、日銀のマイナス金利解除、BOCの利下げ、FEDの利下げの3つが今年の重要イベントとなります。

それぞれのスケジュールについては以下の通りです。

日銀の金融政策決定会合後に行う総裁定例会見の日程は、今後、3月19日、4月26日、6月14日、7月31日、9月20日、10月31日、12月19日と続きますが、3月の春闘での賃上げ率が一定を超えればマイナス金利解除を行う可能性が既に示唆されており、いきなり3月に行う可能性もあります。

FEDが金融政策を議論するFOMCの日程は、3月20日、5月1日、6月12日、7月31日、9月18日、11月7日、12月18日と続きます。FedWatch によると、現時点では、6、9、11月の3回の利下げが市場の事前予想とされており、今後利下げ開始時期や回数の想定に変化があると、その分ドル高やドル安が織り込まれることになります。

BOCの政策金利発表の予定日は、3月6日、4月10日、6月5日、7月24日、9月4日、10月23日、12月11日となります。

これら、日銀のマイナス金利解除が行われるかどうか、FED (やBOC) の利下げの回数が3回以上か未満かの組み合わせで4つのシナリオを以下で考えたいと思います。

シナリオ1 : 円高ドル安

「日銀によるマイナス金利解除が行われ、FED (やBOC) の利下げ回数は3回以上となる」

これは一番円高に振れるケースです。日銀総裁の会見などを見ているとマイナス金利解除の地慣らしを既にしているようにも見え、FED (やBOC) の利下げ時期と重なるなど円高ドル安のタイミングがあえば、アメリカドル / 円は130円ほどに、カナダドル / 円ですと100円を切るかどうか、もし下抜けすれば一時的に95円あたりまで下がるのではと考えます。

シナリオ2 : 円高ドル高

「日銀によるマイナス金利解除が行われるが、FED (やBOC) の利下げが1、2回となる」

アメリカの経済や雇用が好調を維持し、FEDは利下げを1、2回は行うがその後に据え置くケースです。BOCもアメリカの利下げ時期・回数には強い影響を受けると思います。この場合、マイナス金利解除で一旦円高に向かったとしても、アメリカのデータ発表時にドル高で戻ることで、140〜150円 (カナダドルだと106〜111円) あたりのレンジでの上下の動きに収まるのではないでしょうか。

シナリオ3 : 円安ドル安

「日銀はマイナス金利解除を行わず、FED (やBOC) の利下げ回数は3回以上となる」

日銀がFEDの利下げまで粘りマイナス金利を継続するケースです。可能性は低く、アメリカの経済と雇用次第ではありますが、この場合でも通貨ペアが両方弱いことで大きく上下に動くことはないと思います。

シナリオ4 : 円安ドル高

「日銀はマイナス金利解除を行わず、FED (やBOC) の利下げが1、2回となる」

前述の通り、日銀がマイナス金利を今年も継続する可能性は低いと思いますが、もし、円が引き続き弱い状態でFEDの利下げが予想よりも少ないとなると、理論的には上昇することになります。ただ、152円以上は30年以上到達していない領域のため想定は難しく、それでも利下げ期待が出る度に都度ドル安には向かうことにはなるので、そこまでの上昇は考えにくいのではないかと思います。

マイナス金利解除のインパクト

2016年から続いたマイナス金利が解除されれば、利上げとしては2007年以来17年振りとなり、日本円にとって一大イベントではあります。しかし、その後のさらなる利上げを継続する可能性は極めて低く、発表がサプライズであったり、投機筋のポジション解消が重なったりすると、一時的に大きく円高へ動くことはあるにせよ、マイナス金利を解除しただけでは実質的な金利差はほとんど変わりません。

構造的な円安体質と利下げが見込まれる弱いドル

現在、日本は貿易収支とサービス収支のマイナスが継続しており、経常収支は黒字であるものの海外所得の円転もあまり行われず、構造的な円安の状態です。それでも、カナダドルやアメリカドルは近い将来利下げが見込まれる比較的弱い通貨となるので、今後さらにドル高に大きく動くことは考えにくいです。

一時的に円高ドル安に振れることはあっても、一方的な流れにはならず、どこかのタイミング (130円か140円あたり) で落ち着くか、現在の水準近くまで戻るのではないでしょうか。